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スクリュープレスの能力表示と選定方法

1 能力判定方法(呼称能力)

スクリュープレスの能力判定は、テストピースの冷間圧縮によります。能力ごとに算出された所定のサイズのテストピースを10%以上つぶす能力があることが判定基準となります。

1 能力判定方法(呼称能力)
(参考)

JIS B 6402 「プレスの負荷試験法、金属丸棒の圧縮」
材  料:JIS G3101の SS400又はこれと同等の材料
加工条件:呼び能力に応じて次に示す算式により求めた直径及びこれと同一の高さのものを、高さの10%に相当する値だけ圧縮します。
D=4√p / 10
備  考:D-丸棒の直径(mm),p-呼び能力(kN)

(計算例)

4000kNのプレスの場合では、D=H=4√4000 / 10  =80mm

従って直径・高さとも80mmのテストピースの、高さの10%つまり、8mm以上を圧縮すればこのプレスは4000kNの能力を出した事になります。

2 能力試験と荷重計の表示

プレスのスライドスピードと、スライドストロークを最大にセットします。
(フルパワーとなるように調整する)この状態でテストピースを加圧し、その時発生したフレームの歪みを歪みゲージで検出し、荷重計にkNの表示させます。

2 能力試験と荷重計の表示
(セッティング例)

4000kNプレスで、テストピースが4000kNに相応するだけ圧縮されたら荷重計に4000の数字が表示されるように荷重計をセットする。
つまり、テストピースの圧縮値を基準として、荷重計にはその圧縮値に相当した数字を表示させます。

歪みゲージを左右のフレームにそれぞれ2個取り付ける場合では、フレームの片側のみに加わった荷重(つまり1/2の荷重)のセッティングとなり、左に何kN・右に何kN合計何kNという表示法になります。左右個別の表示はそれぞれの偏荷重がわかるというだけで、プレス単体から見ますとかかった負荷は、右と左とを合算した合計の荷重という事になります。

3 最大荷重(最大能力・最大負荷)

2項と同じ条件(最大ラムスピード・最大ストローク)でテストピースを加圧せずに、金型と金型をたたく、ハードオンハードの運転をした場合、テストピースの変形に消費されていた加圧エネルギー(フライホイールエネルギー)はフレームを伸ばす事だけに使用されてしまうので、荷重計には通常3倍の表示が出ます(3倍もフレームが伸びてしまう)。この3倍がこのプレスの最大荷重となります。

(参考)

スクリュープレスではフライホイールの回転エネルギーは毎行程100%消費されます。回転エネルギーを加工物の変形に使用するか、あるいはフレームを伸ばしてしまう為に使うのかの違いとなります。
通常加熱した棒材をたてに置いて圧縮する様な加圧ではエネルギーは材料の塑性変形にほとんど消費されてしまうので、フレームには負荷がほとんどかからず、荷重計の表示は非常に少なくなります。
反対に冷間加圧や、横バリの多い薄物の加圧では、エネルギー調整が少ない場合でも荷重計の表示が大きく出る傾向となります。通常金型対金型の圧縮では、エネルギー調整20%程度で、呼称能力に達する程の負荷がフレームに発生し、荷重計にもそれが表示されます。

4 許容荷重(許容能力)

呼称能力の3倍値である最大能力で、繰り返しプレスを使用すると機械寿命を著しく低下させます。(通例、スクリューやフレームの破損となる)。
プレスはあくまで加工物を変形させる為に使用されるものであって、金型と金型をぶつけるような使用が繰り返し行なわれる事を想定して設計されていないからです。

ここで、機械の剛性設計より、プレスの許容荷重をどこにするかの問題が発生しますが、熱間鍛造の様な成形エネルギーが多く欲しいエネルギー重視型(ずぼっとつぶす様な加圧)には呼称能力の1.6倍程度を、コイニング等の冷間鍛造でフレームに負荷が多くかかる場合(パチンと跳ね返る様な加工)には呼称能力の2倍値程度を採用しています。
つまり同一のフレームであっても、熱間鍛造用ではフライホイールエネルギーを大きく乗せて呼称能力の大きなプレスとし、冷間用では小さなフライホイールエネルギーを採用して呼称能力を少なくします。
許容能力は前者は1.6倍、後者は2倍で、両者とも呼称能力は違いますが、許容能力は同じとなります。

(参考)

最大荷重がかかっても壊れない様に設計すれば良いではないかとのご指摘を受ける場合があります。確かにそれは可能ですが、たとえば10000kNプレスのフレームに3000kNプレスのフライホイールを載せ、呼称能力3000kNのプレスとして使用する様なわけで、めちゃくちゃに高価な機械になってしまいます。
お望みであれば製作は可能なのですが。材質と設計にもよりますが、一般に同じ呼称能力の機械であれば、本体重量の重い物と、スクリュー直径が大きい物ほど剛性が高く・許容値が大きく・寿命も長い、と考えてさしつかえありません。 

5 過負荷停止(オーバーロードプロテクト)

許容荷重を超える荷重はいつでも発生してしまう危険があります。スクリュープレスでは機構的下死点がないので、クランクプレスの様に過負荷でプレスが停止してしまうこと(スティック)がありません。つまり知らない間に過負荷でプレスを使用し続ける危険が多々あります。この為、過負荷が発生した場合非常停止をかける事が必要となりますが、弊社では荷重計の電気信号より、過負荷停止をかけランプ点灯により作業者に警告する方法を採用しております。

(参考)

フライホイールにトルクリミッターを取り付けて、過負荷のエネルギーを放出させる方法もありますが、過負荷でトルクリミッターが常時作動していたとしても実際作業者にはわかりません。ましてトルクリミッターのばね調整を誤って強くしてしまった場合、常に過負荷で機械を運転してしまう危険があり、取り返しのつかない事となりますので、弊社では採用しておりません。 

6 成形エネルギーと荷重計表示の関係

成形エネルギーとフライホイールエネルギーは同一です。またこれらはスライドの落下スピードと比例します。
通常スクリュープレスでは、加圧直前のスライドスピードをコントロールする事により成形エネルギーの調整をします。注意したいのは、成形エネルギーと荷重表示には関係性・関連性が無い事です。これまでの説明により、成形エネルギーが同じでも、テストピースをつぶすか、金型と金型とをぶつけるかで荷重計の表示が著しく違うことでもおわかりと思います。

荷重計の表示はあくまでフレームに只今何kNの負荷がかかったかという結果の表示でしかありません。スライドのスピードは自在に調節できますが(成形エネルギーは自在に調整できる)何トンでたたけという調整をする事はできません。 (まったく同一条件の加工物を成形する場合は、スライドスピードの調整と荷重計の表示とは比例します)

(参考)

スライドのスピード調整は、通常スライドの落下速度をエンコーダー等で検出し、毎行程同じ速度に制御する方式を採用します。
希望のスピードはタッチパネル上やセッティングダイアルなどであらかじめプリセットされます。
プリセット値が小さい場合はスライドは加速直後クラッチオフとなり、後は等速で惰性落下します。クラッチオフをどこでするかということであり、インバーターモータ等による回転制御ではありません。サーボモータによる、クラッチ伝達の無い直動では、フライホイールは逐次回転制御されます。加速と減速を自動的に組み合わせ、一行程最速で加圧します。 

7  スクリュープレスの能力選定時の注意点

スクリュープレスを選定する際、成形エネルギー(何kNプレスか)とともにフレームの許容荷重も考慮する必要があります。つまり成形エネルギーはまだ上げられるのにもうフレームが持たないというケースがままあるからです。
特に横バリ面積の大きい場合や冷間の場合、成形エネルギーのセットは半分なのに、すでに許容荷重を超えてしまうという事があり得ますので注意すべきです。

スクリュープレスの能力は呼称能力で呼ぶべきです。許容能力で呼ぶ事は公正取引上問題があります。なぜなら今までの説明でおわかりの通り、そのプレスは呼称能力のテストピースはつぶせても、許容能力のテストピースをつぶす事はまったく不可能だからです。

8  スクリュープレスの能力選定時の注意点

基本的にスクリュー直径を外れた偏心荷重はかけられません。中心からずれるに従ってかけて良い荷重が少なくなりますが、基本的に中心に荷重をかけるべきです。

スクリュープレスについて

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