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世相

平成12年 正月

  • 2000年01月

「罪投資、好投資」
 利回り二十%。冷静に考えれば同等以上のリスクが存在することは自明だろう。間違えれば元も子も失くすが、事実となった。プリンストン債。スイスよお前もか!永世中立国、最も信頼できる国と思っていたが、その外務省も横槍を入れたとか、入れなかったとかで日本の検察もとうとう堪忍袋の緒を切った。クレディ・スイス・ファイナンシャルプロダクツ銀行の公然の飛ばし行為と隠匿だ。そして二十世紀の終わり間近、西欧諸国の新たな植民地政策は続くのである。やくざな国際金融機関の日本攻勢に注意しよう。大事な財産は将来の躍進を考えて新規の設備投資へ。そう、ロボット付きの全自動スクリュープレスなんかも良いかも知れない!高校の求職者が「貴社のような技術力の有る会社を希望して」などと町工場を回る時代になってきた。すすけた機械がヨタヨタと動いている様では百年の夢?も瞬時に失せる。

「生産学術会議」
「このままで良いのか、日本のものづくり」。少なくとも、現在の日本の経済基盤を構成している「ものづくり」が来るべき二十一世紀にどの様になって行くのか、いや、どの様にしてゆかなければならないのかを、産学官三者で論議することを目的に昨年十二月に三回目が開催された。禅問答的最も難解な発表をしたのが?前川製作所の前川会長。「平均的な物で満たされなくなったニーズ。個人的・人間的・流動的なニーズ。不安・願望・夢などの暗在系の需要・・・」誠に判りづらいが、誰でも明快に判る部分のビジネスチャンスはもはや無くなった。前川会長の「場所や人間から切り離されないモノづくり」に対する解釈の努力を続けているところだ。

「日本奇怪」
母は強し、お受験に落ちた我が子の(いや己の)恨みを十分に果たした。かくして凄惨な計画的な幼児殺害事件が東京の高級住宅街で発生した。近所同志、何故?そんなことをしたら後がどうなるのか。総ての答えは明白なのに、事は起こってしまった。
・・・ちょっと待って欲しい、その子はまだ死んでいない、六ヶ月間グルに看取ってもらえば必ず生き返る! あなたの足の相からすると、あなたの経営する会社は二ヶ月後に倒産します!
人の不幸と不安感につけこんだ金儲けの新興宗教が常識外の利益を得ているのがなんとも不可解だ。何百万円という上納金はいったい何と考えれば良いのであろうか。
 警察の不祥事と隠蔽。別に驚きはしない。昔からあったはずだ。たまたま今回連続して発覚し、マスコミが騒ぎたてただけだ。学校教師の淫行事件、これは昔は無かった。教育の質の低下は目を被うばかりだ。パンツの見えんばかりの女子高生の制服の着用を許している学校でまともな教育がされているとは到底思えない。塾の存在を認めた文部省は噴飯物だ。塾なしでは学校教育が成立しない事を認めた。文部省の失策は百年以上の長きに渡り影響を及ぼすだろう。

「満蒙開拓団、再?」
 この秋、北京や大連に何回か行ってきた。沢山の日本人ビジネスマンにもお会いしたが、なぜか食い詰めた日本人が大挙して押し寄せたあの昭和初期の出来事と重複した感じを持ったものだ。日本は不景気とリストラで職探しに往生している。行け満蒙開拓団!あの悪夢がまた起きませんよう祈るばかりです。

「追い風・向かい風」
軽自動車が絶好調のようだが、またも日産は持ち駒が無い。RVの時もそうだった。そして乗り込んできたのがリストラの教祖の首切りゴーン氏だ。下請・部品メーカーも戦々恐々だが、何でも、ルノーの方よりも三割方安く鍛造部品を供給できる日本の日産系部品メーカーがあるそうで、ここはもしかすると注文が増加する可能性がある。大風は時として逆風でなく追い風にしてしまう。技術力があるか無いか、ここが勝負だ

「明暗アジア、そして新素材」
インドネシアが大変だ。沢山の島々に存在する様々な文化と宗教を強力な指導者が纏め上げてきたこの国が空中分解の危機に瀕している。下手をしたら、東洋のユーゴスラビアになってしまう懸念がある。そしていつもいたいけな子供たちが紛争の犠牲になってしまうのである。マレーシアは再度マハティールを選択した。インドネシアを意識したのかしないのかは知らないが、強い領袖に率いられ、マレーシアの経済はここ一番の上昇が期待される。宗教と民族が完璧なまでにミックスしてしまったタイでは民族間の争いが無く、こちらでも景気の動向が上向きになって来た様だ。アジア諸国はそれぞれの国情により、経済の状況に明暗が分かれて来た。台湾はあの大地震にもかかわらず依然好調だ。台北から高雄に延びる高速道路も損傷は無かったし、壊滅的なダメージを受けたのは南投県の限られたエリアだけであった。半導体とコンピューター関連は絶好調。ノートパソコンの生産も増加の一途のようだ。そして、ここで注目されているのがマグネシウムの筐体製造。来るべき二十一世紀、マグネの使用は相当量増加する事は間違いない。素材は海水から塩を採るように得られ、現状無尽蔵といって差し支えない。リサイクルも容易、重量はアルミの三分の二で自動車の部品として採用すればエネルギー効率も向上とあれば日本での注目度も低かろうはずはない。

「ヨーロッパ、ブランド」
先般イタリアとフランスを訪問して気がついた事がある。美術館や博物館に子供料金の設定が無い事だ。カフェテリア方式のレストラン(いわゆるバイキング式)でも子供は無料のケースが多い。乗り物では子供料金の設定があったが、エネルギーを消費する部分では金を取り、居ても居なくてもどうでも良い部分では金を取らない。子供に対する見解の洋の東西の違いに想いをめぐらしたものだ。それにしても、ミラノとかパリのファッションブランド商品は一体何と考えれば良いのだろうか。オスメスとかシンブンシーとかダッチとか名前が付いただけで製造原価の何十倍でハンドバックとかスカーフとかが、ばんばんと売れてゆくのであるから、我々機械屋からしてみればまさに奇怪な世界なのだ。ヨーロッパの稼ぎ頭は、このブランドと言うただの名前だけと言っては過言だろうか?
西暦二千年、来るべき二十一世紀はアジア諸国がより台頭するはずだ。そして日本はものづくりに、アジア諸国に先んじて、より一層の磨きを掛ける必要がある。ものづくりを失ってしまったら日本は恐らく国家としての基盤を失ってしまうことであろう。諸般の困難を乗り越えて本年も一生懸命頑張りたいと心に誓う新春であります。

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