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世相

2021 夏

  • 2021年09月

世相日本世界感じるままに                    榎本機工㈱ 社長 榎本良夫

 

「オリンピック2020 パラリンピック2020」

終わるまで、本稿を書く事を保留にしておいた。やるのか、中止するのか、はじめたが終わるのか、中断するのか何とも悩ましい状況だったので、結末を迎えるまで書く事を中断していた。新型コロナウイルス蔓延という世界中を巻き込んだ大禍のさなか、何とか曲がりなりにもこぢんまりと終わった東京オリンピックとパラリンピック2020。おそらくずっと後世になって記念すべきオリンピックだったと称賛される事に違いない。東京も日本国中もはらはらする危機的状況にありながら、世界中から若いアスリートが参集してくれて、多くの制約の中で、無観客というこれも史上初めてで開催に至るも何とか終わらせる事が出来た。選手も1年の延期は大変だった事だろうし、選手村での監禁状態、PCR検査、観客の声援も無しと散々だった。大会スタッフや裏方の我慢尽力も想像を絶した事に違いなかった。しかし日本のアスリート達は大奮闘で、感激する場面も多数あった。歴史に残る大会だった事は間違いない。色々な論議が依然続いているが、少なくとも10年程待ってから見直すと良いのでは無いか。

 

 

「オリンピックのあり方」

ドーピングの問題で今回の東京オリンピック2020にはロシアは国としての参加が認められなかった。 アスリートの履くスポーツシューズや球技のラケットなど競技で使用される道具の数々は現在の工業技術で色々な改良が試みられ、競技成績も左右するらしい。1960年のオリンピックローマ大会のマラソン優勝者アベベは裸足だった。その4年後の東京大会ではプーマ製のシューズを履いて2度目の優勝を果たした。一体どちらが良かったのであろうか。速さを競う競技は、いずれ肌に何か塗るかで空気抵抗が著しく削減できるようなクリームでも出来るのかなとつまらない想像もしている。道具を使う競技は大会組織委員会が用意した共通の道具を使えば公平になると思うのだが、練習の都合もあり、そうも行かないのだろう。ならばいっその事、陸上競技は競技場をゴム敷きにしてアスリート達は裸足でとか、体操や重量挙げの様に皆が共用する器具での競技以外はやめるとか、したらどうなのか? とか、該当する競技のアスリート達には失礼になった事を書いて申し訳ない。オリンピック開催に対する論議はこの他にも多々あるのではあるが、若い優勝者の感激の涙を見るとやる意義は大きいと思っている。

 

「終わりの無い新型コロナ禍」

人から人へうつるにつれ変異し感染力と毒性が強くなっているらしいが、ウイルスも種の起源なみに生き残られる物が生き残ろうとし、残るすべを獲得した変異株がまだまだそこら中にうようよしているという事なのであろう。紀元前1350年にはすでに記録のある天然痘は、種痘という人類初のワクチン接種により、1980年頃に3300年以上にわたる蔓延の歴史に幕を閉じた。しかしながら野生動物などには類似の菌がまだいるらしい。軍事目的で天然痘の菌を保有している国もあって、天然痘のウイルスが地球上から完全に消滅しているという事では無いらしい。かつてオウム真理教もこの手の細菌兵器開発をしていた。

となると、このCOVIT19と名付けられた新型コロナも消滅する事なく今後長期に渡り我々の回りでうろうろして居る事になるのであろう。そして種痘と同じく我々地球に存在している人類のほとんどがワクチンを接種するとか、感染して集団免疫を獲得するしか対抗策は無いという事になるのであろう。インドでは多くの人達が実際に罹患した結果抗体を持ち、免疫を獲得したらしいが、その陰で老人を中心にたくさんの犠牲者が出たという事だ。いやではあるが、インフルエンザの様に、ずーっと付き合わざるを得ない様だ。一体どこから出て来たやつなのか、本当に悩ましい。

 

「新型コロナワクチン」

台湾でも国産ワクチンの製造と接種が始まった。蔡総統自らそのワクチンを真っ先に接種して見せた。インドではモディー首相はイギリスからのライセンス生産のアストラゼネカでは無く、国産のコバクシンを率先して接種した。日本製は塩野義がまもなくらしいが何にしても遅い。GDPの20%しかないものづくりを追うのはアホだ、的な論評の経済学者がいるが、医薬品がその20%に入って居るのか知らないが、ものづくりを軽んじて国が成り立つとでも言うのだろうか。現在半導体不足で自動車すら工場の生産をストップしなければならない事態に至っている。それでもサービスこそが経済・企業活動の中心であり、経済はサービスで動いていると認識するのだろうか。サービスも大切だがその根幹にあるのはものづくり。ものが無ければ何も始まらない。

 

「まちぼうけ

詩人・童謡作家の北原白秋作詞の歌で、出身の九州柳川市の柳川川下りの若い船頭さんがこの歌を歌ってくれた記憶がある。インバウンドと騒がれ・期待されたが、このコロナ禍で海外からの観光客はほぼゼロ、オリンピックも無観客と、まさに「まちぼうけ」の歌通りになってしまった。うさぎは二度と現れなかった、、、、-s柳川

 

「テニス全豪オープン2021大坂なおみ、沪州老窖

2021年2月テニス全豪オープン決勝戦、大阪なおみ対ブレディは大阪の優勝で終わった。その会場でのスポンサー広告に中国の有名な白酒(パイチュウと呼ぶ)メーカーである沪州老窖(ろしゅう ろうこう)の広告表示がテレビ画像の向こうに写っていたのを気づいた人はまずないだろう。白酒は高梁(コーリャン)から作られるアルコール度の強い蒸留酒で、その臭いからお世辞にもおいしいお酒とは言えないが、貴州のマオタイ酒など最高級品だと数十万円もするのであるから高級ウイスキー顔負けの存在なのである。沪州老窖の工場は、長江(揚子江)上流の重慶よりさらに上の沪州と言う町にある。中国人以外はほとんど知らないだろうが、弊社のプレスが何台かこの町に嫁いでいるので私は良く知って居るし、何度も訪問している。しかし、なんで焼酎の広告がテニス全豪オープンの会場にあるのか?とても不思議に思った。沪州老窖

 

「ドイツ~お皿とパン、日本~茶碗と漬物、中国も変わる、そして自動車は作り過ぎか」

働き方改革実行のまっただ中、ドイツの働き方に学ぶというわけでたくさんの本を社員と一緒に読んでいる。確かにドイツ人はとても合理的でムダを嫌う。食べる物にしてもムダを嫌い、私のビジネスフレンドは食事の後お皿を洗わなくても良いほどきれいにして食事を終える。お皿をなめるのでは無く、ソースもスープも残しておいたパンできれいに吸い取ってぬぐい、すべてをお腹の中に納めるのである。日本もかつては同じ様な事をしていて、食事後に飲む白湯やお茶は決して湯飲み茶碗を使うのではなく、ご飯茶碗にそそぎ、一枚残して置いたたくわん漬けなどの漬物できれいに洗って全部のデンプン質をお腹に納めて終えたのである。私も似たような記憶がおぼろげながらにある。漬物で洗いはしなかったが、食後のお茶はご飯茶碗だった。母親が東京も郊外の出で(昔は東京の郊外でもど田舎だった)半農だったからかも知れない。中国でもいよいよ食事の食べ残しの廃棄は禁止の方向で法律が定められてきている。特に接待では残す程料理を出さないと失礼であるという風潮があった。きれいに食べ尽くしてしまったら出す量が少なく失礼にあったるという事である様だ。アパレル業界でも作りすぎて売れ残った廃棄の量が中途半端では無く、なんとか改めようという傾向に動いて居る。そして、いずれ自動車もそうなって行くのであろうか。

 

「自然が取り戻してゆく道

農業に対する論議が噴出している。衣食住と言うが、実際は食住衣だろう。食べるが最優先で、食料を生産する事はものづくりの最も頂点に位置する。実は農業はもはや工業製品無しでは成立せず、多数の農業機械や肥料、農薬など工業製品が無ければお米も作れないという事はすぐに理解できるだろう。人力でやればとは言っても、その鋤や鍬でさえも実は鍛造製品なのであり、我々が製造するプレス機械やハンマーで製造されている。農業に画一的な論議は成り立たないと言う。そりゃそうだ、九州と北海道と同じ作物でも場所が違うだけでやり方はガラッと変わって来る。お米は作りすぎて減反ではあるが、これが将来輸出産業にもなり得るらしく、そうなってくれば日本も食料の輸出国となって国際間での立ち位置が大きく変わってくる。是非農産物輸出国になるほど発展してもらいたいと念願している。他方過疎地の、特に山あいにある田んぼや段々畑は機械化も困難で農地の放棄地になり始めている。山田という名字はもちろん山の方にあった田んぼに由来しているが、山田は耕作が放棄され、くずなどのつる性の草に浸食されて荒れ果てて来つつある。昔先人達が苦労して開墾した田畑が今逆に自然が立ち位置を取り戻し始めている。また元の自然に戻って行きつつある。田んぼ

 

「自動車教習所

2016年の日経トップリーダーに、武蔵境自動車教習所の女性社長高橋さんが、社長在任中にもかかわらずアメリカのスタンフォード大学に留学中、という記事があった。2年間の予定とあったので、すでに帰国されているのだろう。多くの未来学者が車の自動運転の時代がまもなく到来と予言していて、その頃には特定の人だけにしか運転免許証は発行されないと予言している。となるとこの教習所もその頃は不要の存在になっているのだろうか。それを予期してこの女性経営者はアメリカ留学をされたのだろうか。何か素晴らしい将来の生き残り算段をされているのかも知れない。コロナ蔓延が一体いつ終息に向かうのかとストレスは溜まる一方ですが、観光や飲食関係の仕事はそれどころでは無く、事業の存続の危機に瀕している状況で、もうひと頑張りで乗り切っていただきたいと切に願っています。今年後半の皆様のご健勝とご健闘をお祈りします。

 

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